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東京和泉リトルシニア000022
東練馬シニア1404×9
東練馬シニアの皆様、ありがとうございました。また挑戦させて下さい!

 やはり王者東練馬シニアさんは強かった。またしてもベスト4の壁に阻まれた。2017年9月24日が「初の決勝進出」という東京和泉シニアの歴史を変える日にはならなかった。しかしこの準決勝の舞台へ来て我々の前に行われた準決勝第1試合、江戸川中央シニアさん対世田谷西シニアさんの試合を観戦出来た事、そして第2試合で実際に東練馬さんと試合をしてその強さを肌で感じれたことは、選手にとっても私達指導者にとってもどれだけ財産になったであろうか。いや、この敗戦を確かな糧としなければならない。関東大会へ向けて、そしていつか必ずリベンジすることを誓って。

 試合は先発投手が試合をつくれなかったことが全てである。この東東京支部大会の準決勝というレベルの高い舞台で1年生投手を先発させた私が悪いのかも知れないが、私はこの起用を後悔していない。エースナンバーを背負わせた2年生投手の準々決勝までの投球内容と、ここ最近の1年生投手の調子の良さを比較したらこの試合の先発は1年生投手で迷いは無かった。「荷が重い」のは承知の上だ。彼にはこの試合で投げたことで、そしてその試合をつくれなかったことで何かを感じてくれればそれで良い。皮肉なもので2回途中からリリーフした2年生投手はこの秋4試合目にして内容は一番良かった。ここ最近の投球時に見られた大きく抜ける球や酷いワンバウンドの投球が無かった。この状態であればもし先発していたらそれなりにゲームをつくれたのかも知れない。ただ、2年生投手としてはこの試合の先発を1年生投手にしようと監督・コーチに思わせてしまったことに悔しさを感じて欲しい。そしてもう1人、この試合を「心を変えるキッカケ」にして欲しい選手がいる。

 初回、いきなり無死2塁のピンチを背負ったが、セカンドライナーで2塁走者が飛び出し併殺でピンチを脱したかに見えた。しかし次の3番打者が放った右中間への打球をセンターがグローブに当てたものの落球して2塁打としてしまい、4番に適時打を打たれて先制を許してしまった。無死走者無しで3番の右打者。長打を警戒しなければならない場面であるからあらかじめセンターを弱冠左中間よりによせ、深めにポジショニングをとらせていた。さらに右打者の右中間への打球であるから右にキレていく打球になるので、本来ライトが捕球しにいかなければならない。しかしそれでもライトを守るのは1年生だ。この日、先発のマウンドに上がったのも1年生。2年生がカバーしてあげなければならない。実は5月に行われた3年生の夏の大会で同じような場面があった。彼は覚えているだろうか。2年生で1つ下の学年としてセンターで先発出場した彼は、やはり初回に右中間の打球をグローブに当てて落としている。あの時は3年生であるライトがカバーしてあげなければならない打球であったが、今回は立場が違う。彼にはあの打球を捕れるような選手になってもらわなければ、レギュラーの座を奪われた3年生に申し訳が立たないだろう。奇しくもこの試合はこのセンターの選手がキーになったように思う。初回のチャンスでの凡退、そして右中間の打球の捕球ミス、2回のセンターライナーの目測を誤り頭を越されて適時3塁打としてしまったこと、さらに最終回で犠飛を放ちはしたがコールドを阻止する一打とはならなかったこと。全てあと一歩、あと一押しというプレーばかりである。そのあと一歩が届かないのは、「ガムシャラさが足りない」という彼の練習に取り組む姿そのものだ。彼は確かに能力を持っている。だからこそ1つ上の学年のチームの中にあってもレギュラーを獲得していたのだ。そこそこの練習をしていればそこそこの相手にはそこそこの結果は出せてしまう。しかし私が彼に求めるのは「そこそこ」ではない。東練馬シニアさんのような全国クラスのチームを相手にしてもそれと同等か、あるいはそれ以上のプレーで戦えるくらいの選手になってくれることを求めている。そうでなければ私が身を引き裂かれるような思いをしてまで、3年生ではなく2年生を夏の大会に起用するようなことなどしない。人間だからそれぞれ性格も違うし、野球するプレースタイルだって違う。感情を表に出すのが苦手な選手だっていて当然だ。でもただ淡々と練習をこなすだけでは、同じことを繰り返しているだけでは同じ結果しか得られない。事実、夏と秋、全国クラスのチームを相手にした時に同じようなプレーが生まれてしまったのだ。今までも決して一生懸命やっていないとは言わない。でももう一つ情熱が足りない。何振り構わず、余計なことは考えず、ガムシャラにボールを追いかける、バットを振る、走る、そういった姿勢を練習からチーム全体に示していけるような選手になってほしい。それが出来ればきっと東東京でも注目されるような選手になれると思うのだが…。

 その点で言うとこの日6番レフトで先発出場した選手のガムシャラなプレーは球場全体を熱くした。2回の1打席目、初球を叩いて三遊間の深いところにゴロを転がし1塁ベースにヘッドスライディングで内野安打を捥ぎ取った。そして1塁ベース上でガッツポーズ。あのプレーがどれだけチームに勇気を与えたことか。そして間違いなく東練馬に火をつけさせたのもあの一打一走だったろう。あれで東練馬の選手達にもそしてベンチにも「なめていたら飲み込まれる」と思わせたに違いない。そして2打席目。左中間に渾身の2塁打を放った。しかし私が嬉しかったのはその打席の2球目の豪快な空振りだ。これをやる為にはまず失敗を恐れない勇気と、投手にタイミングを合わせる技術と、バットを力強く振れる身体の力が無ければ実現できない。まさに心・技・体が揃った一振りだったというわけだ。これは毎日コツコツと努力を積み重ねてきた者にしか踏み入れられない境地だ。毎日本気で努力している者だからこそ「負けたくない」という思いが強くなり打席での心が充実する。そして何より毎日バットを振り続けているからこそ軸がブレずにあれだけの強いスイングが出来るのだ。このレフトの選手は決してセンスが光るというような選手ではない。得に守備にはまだまだ練習しなければならないことが沢山ある。でもひたむきに野球に取り組む姿は大したものだ。センターの選手と対照的な新チームになってからの4ヶ月を過ごしてきたのではないだろうか。5月の夏の大会時点ではこのレフトの選手が3年生の大会でレギュラーで出場することなど考えられなかった。新チームになってから今も尚、熾烈なレフトのレギュラー争いをしているくらいだ。しかしこの東練馬戦に限って言えば、結果を出したのは3年生の試合に出場していなかった方の選手だ。下手くそでもガムシャラにやってきた4ヶ月。上手いなりにそれなりにやってきた4ヶ月。それで急激に差が縮まった。現在怪我で戦線離脱している内野手が戻ってくれば、捕手を1人外野に回そうと思っている。そうなれば外野のレギュラー争いは益々熾烈だ。努力し結果を出した者のみが生き残る。そこには過去の実績も何も関係ない。レギュラーと背番号は奪うものである。

 12年のコーチ生活。そして監督として2年目。14年の時を経てようやく選手が純粋に相手チームと戦っている姿を見ることが出来た。今までの東京和泉シニアの首脳陣は、試合中でもプレーの結果が悪ければ厳しく指導する監督・コーチ陣であった。だから選手が結果を恐れ、プレーすることに怯え、監督・コーチに怒られることに怯えながらプレーするのが常であった。相手チームと戦う前に自軍のベンチと戦わなければならなかった。それを乗り越えられる者しか結果を出せないチームであったのだ。もちろんそれが逆に高校野球で役に立ったというOBもいたわけであるから、その指導方針を否定しているわけではない。ただ高校に進学して高校野球をやればその学校の伝統のようなものが必ずあるし、色々なことで縛られてしまう可能性が高いから、せめて中学生のうちは相手チームとの純粋な勝負を楽しませてあげたいという私の強い思いがあった。この東練馬戦の選手達の姿は14年間ずっと私が思い描いていた選手の姿なのである。負けてしまったのは残念であったがそれを見られたことがとても嬉しかった。しかしこれで満足してはいけない。これでようやく強豪チームに挑戦するベースが出来たに過ぎない。どれだけ綺麗ごとを並べても結果は2対9のコールド負け。最後に2点とって一矢報いたように見えてもエースが代わってからの得点である。完膚なきまでに打ちのめされたと言っても過言ではない。あの牙城を崩すのは容易ではないが、いつか必ずリベンジするという信念を持ってこれからの練習に取り組み、これからの関東大会、そして来春、来夏と向かっていってほしい。この悔しさは絶対に忘れないで欲しい。

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