5月8日(日)。
夏季関東大会1回戦 対静岡蒲原シニア。
いやぁ~…。儚い作業だな…。夏の大会敗戦日はシニア指導者にとって正月のようだ。1年間、24期生のことだけ考えて毎日を過ごし、何とか勝てるチームにしようと全力を尽くしてきたけど、その全てが今日の敗戦で水の泡となる…。色々なことを犠牲(という言葉は良くないけど)にして、このチームの為にと思って…、でも負けたら終わり…。これがトーナメントの残酷なところだ。
今年の3年生のチームはちょっと成長が遅れている感じがしていた。まだまだ成長途中でとてもとてもピークとは程遠い状態なのに、「もう夏が来てしまった」という感じだ。身体が成長してきて以前出来なかったことが段々出来るようになって、心でも頭でも「野球の試合を戦う」っていうことの意味をようやく理解し始めて、これからチームがチームらしくなって来るところだった。「それじゃあつまり夏の大会にピークを持ってくるピーキングが上手くいっていないっていうことじゃないか」と言われてしまえばそれまでなのだが、下級生が多くスタメンに名を連ねていることも原因となっているし、まだその段階に到達していない心と身体を無理矢理引き上げようとしても、何も良いことが無いということは私の経験が証明している。
身体が大きく強くなってきて、それに伴って心も少し大人になってきて、ようやく中学硬式野球を戦う下地が整う。それまでは待つしかない。待たずにケツを叩いて無理矢理引き上げようとしても我々大人の言っていることを理解してもらえないし、大人側も通じないことにイライラしてしまって衝突してしまう。中学生が一番嫌うのは小ウルサイ大人だ。恐怖政治を用いて従わせようとすれば、「いい子ちゃん」を演じる虚像中学生を生み出してしまい、近道なようで実際は少しも前に進めていないことになる。
「3年生」とは今年の新年明けた時から24期生に対して言っているが、彼らは先月に中学3年生になったばかりである。もちろんそれはどのチームも同じ条件だからこの試合に負けたことの言い訳になんてなる筈も無いのは百も承知だが、そんな3年生のピークが今である筈もない。敗戦を正当化する気なんて毛頭ないけど、この試合が通過点であることもまた事実だ。東京中日スポーツ杯や林和男杯、東日本大会などもまだ残っており、それらの大会を経て成長出来る伸びシロがまだまだある。高校入学までと考えたら、まだあと1年しっかりある。このチームでもっともっと野球をしていたい。
試合中のベンチは燃えていた。決して才能に恵まれた選手がいる訳ではないけれど、小さな力を結集し、大きな力を生み出していた。ベンチが「勝利」という目標に向かって一つになっている実感があった。確かな情熱を持って戦った。この時間がいつまでも続いて欲しいと思った。試合終盤、選手達が必死に戦っている姿を見て涙が溢れそうになった。選手達が逞しく見えたし誇らしかった。先ほどトーナメントを「残酷」と表現したが、こういう感情になるのはトーナメントだからこそだと思う。
もう打てる手は全て打った。振り返れば悔いの残る采配、身を引き裂かれる想いで振るった采配もあるけれど、ほとんどがコーチ陣と事前に打ち合わせて、選手達にも役割を伝えて、準備した通りにすすめることが出来た。2回の5失点は計算外だったが、昨夏の東東京支部大会準決勝対東練馬戦と比べれば、切り替えて勝負手を次々に打てていけたと思う。負けた試合は必ず後悔が残るけれど、いつにない充実感も持てている。怪我人が出て戦力ダウンしたことは残念だったが、それも踏まえて今持てる力は出し切れたと思う。
24期生には「野球を楽しむ」とは何たるかを教えてもらっている。私自身チームの最大目標として掲げてやっているが、自分自身がプレイヤー時代にそのような経験が無い為、いつも手探りになるし、「本当に間違っていないのか?」と不安になる時もある。でも24期生達を見ていると自信が確信に変わる。やっぱり野球はスポーツであり楽しくなければ意味がない。そしてこの試合のように心を燃やして真剣勝負することが最高に面白い。これ以上楽しいことはない。
静岡蒲原シニアの監督さんは素敵な人だった。「ウチは全員がレギュラーということでやっている。その学年学年でしか戦わない。高校で活躍してもらうことを目的としている」と話されていた。素晴らしい考え方だと思ったと同時に、「なかなか出来ることではない」と感服した。特に静岡蒲原シニアさんのように強くなれば良い選手が入団してくるし、下の学年にもより力を持った選手がいるハズ。その選手達の力を足せばより強いチームが作れて、より優れた結果を狙うことも可能だ。勝負事は勝たなきゃ面白くない。誰でも勝ちたいと思うハズである。その感情を押し殺して選手達の成長のみ願い、あくまで中学野球をやはり通過点としか考えていないということだ。それでいてあれだけ強いチームを作り、毎年結果を残し続けている。名門が名門としてあり続けている。凄いことだ。
「また練習試合でも何でも遊びにおいで」と言って頂けた。是非そうさせて頂きたい。このチームにまた何かを学ばせてもらいたいと思った。24期生のお陰でまた素敵な出会いを頂けた。そして素晴らしい試合をありがとう。また一段と野球が好きになった。