2022年7月16日(土)・17日(日)・18日(月)。
ミーティング(永福地域センター)・練習(坂東グラウンド)・練習(秋ヶ瀬グラウンド)。
天気予報と睨めっこしていた1週間。土曜日は然程雨が降っていたわけではなかったが、前日金曜日までの雨によりグラウンド不良。残念であったが永福町の施設を借りてミーティングの時間を2時間程とることにした。最初の1時間は先週のオープン戦後の片付けに時間がかかったことの反省から、誰がどの係を担当するべきかの見直し。後半の1時間はあと1ヶ月に迫った秋季東東京支部大会へ向けての練習メニューの確認とそのスケジューリングについてだ。
練習は「やったつもり」になってしまっていることが多い。例えば坂東での活動は8時集合で17時解散が目安だ。しかし準備と片付けに45分ずつ、捕食に15分×2回、昼休憩に約1時間、これらを全て足すと3時間になる。グラウンドには9時間いるが実際に練習している時間は基本6時間となる。土曜日は登校日の選手が隔週でいる為に全員が揃って練習している時間は約2時間半。そしてその週末が秋の大会まであと何回あるのか?きっと選手達はこんなこと考えたことなかったのではないか?私は土曜日仕事だった為そのミーティングに出席出来なかったが、工藤コーチにこういったことを教えてあげて欲しいとお願いをした。「選手達自身で練習メニューを考える」という活動の一貫である。選手達は大会までに残された時間をどう受け止めただろうか?
私が6年前に東京和泉シニアの監督になって一番やりたかったこと…、それがこの「練習メニューを選手達自身で考える」という活動だ。しかし監督になった当時はまだ選手・チームスタッフ、そして父兄も含めて、そんな私の考えを受け入れられる状態じゃないという判断をした。いつかチーム組織が成熟した時にそういった改革に踏み出そうと思い、一度胸の奥に閉まい込んだのだ。ところが6年経ってもなかなか私の思うように組織が成熟してくることはなかった。それはもちろんその組織のリーダーである私の力不足以外何物でもない。「ただ待っていても先に進めない」とようやく決断出来て、今の選手達に懸けることにしたのだ。
我々指導者も日々勉強してどんどん新しいことを取り入れチャレンジしていかなければならない(「選手達自身が考える」という活動は決して新しいものでもない。トップダウンに対してボトムアップ理論を取り入れているチームは既に多く存在している)。それは社会が物凄い速さで変化しているからである。私が中学生だった約30年近く前は、社会の常識と野球界の常識が一致していた。野球は軍隊気質のような厳しい世界で、理不尽極まりない活動が展開されていた。しかしその時代は会社にも厳しい上司がいて、部下が歯を食いしばって付いていかなければならない時代だった。だから選手達は「お前達はここで厳しい経験をしているから将来大人になった時に役に立つ。企業にも重宝される」と言われ育ち、それを見ていた父兄にも許容された。しかしそれから10年余りが過ぎてまず社会が変化した。高圧的な態度をとる上司はパワハラと言われて罰せられるようになった。ところが社会がそのように変化しても野球界はなかなか変わらなかった。社会の常識と野球界の常識が対極にあるという時代だ。しかしそれからまた10年以上が過ぎた頃、野球界がようやく重い腰を上げ始めた。古臭い体質が残る日本の野球が敬遠されはじめ、他スポーツの隆盛と共に野球人口減少というこれまで考えられなかった現象が起きた。胡坐をかき続けた野球界がいつの間にか危機に瀕したのだ。野球界の常識を社会の常識と一致させようとしているのが現代の野球界だと私は分析している。
しかし我々指導者スタッフがそのギャップに苦しめられていることは確かである。「野球とはこういうものだ」と若い時に刷り込まれたことと、現代野球の考え方に余りにも差があり過ぎる。私達の思う「当たり前」が全くと言って良いほど通用しない。受け入れられない。だから毎週のようにコーチ陣と議論を重ねている。平日は本を読み、ネット記事に目を通し、ユーチューブなどからも情報を得て、考え方をアップデートしていく努力をしている。私が監督になって6年、チームに数々の改革を施してきたがそれでも社会の変化のスピードについていけていない気もしている。「常識を疑う」姿勢は常に持ち続けていたい。
現代社会の職業はまさに多種多様だ。「ユーチューバー」などという職業は私が中学生の時には想像も出来なかった。何せ私が中学生の時は携帯電話すらなかったのだから。唯一それらしかったのは父親が使っていた車電話である。中学生はポケベルで連絡を取り合い、好意を抱いた女の子には直接家に電話して「頼むから親じゃなくて本人が電話に出て!」と願ったものだ。現在東京和泉シニアに在籍する選手達が大人になった時、どのような職に就くかなんて皆目見当もつかない。でもだからこそ、どんな社会人になるのか分からないからこそ、どんな組織にいても「自分の役割は何なのか?その役割を果たす為には何をすれば良いのか?自分の長所短所と照らし合わせながら、どんな努力が必要で、どんな毎日を過ごしていかなければならないのか?」…、それを自分で考えられるようになる為のトレーニングが必要なハズだと私は考えている。
だから自分達で考えて欲しい。東京和泉シニア25・26期生チームという組織は何を目標とし、その目標達成の為にはどんなチーム力が必要で、その為にはどんな練習が必要で、選手一人一人の役割は何なのか、その役割を果たす為には一人一人どんな毎日を過ごさなければならないのか?
「選手達で考える」という活動はまだ始まったばかり。日・月の練習を見てもまだまだ足りないところだらけだ。だから今は我々指導者スタッフからも多くのアドバイスをしている。ただそれは「指示」ではなくて、あくまで「フォロー」である。そういった状況を考えれば土曜日のミーティングはとても意味のある時間だったのではないか?いつか必ず選手達が現在よりも数段大人になって、意義のある、意志のある、高度な練習が展開されていく日が来るハズだと信じている。チームが強くなれるかなれないかは選手達次第。こんなに面白いことあるだろうか…。もちろん満足のいく結果を得られなければそれは私の責任であるが、選手達の可能性に期待したい。