2022年10月2日(日) 坂東練習
秋晴れ。
雲一つない青空、気温、湿度、グラウンドコンディション…、こんなに全てが揃う日は一年を通してそう何日もあるものではない。まさに野球日和。
秋の大会に敗れてから身体づくりをメインに数週間活動してきたが、来週から始まる1年生大会に向けて今日は午前中に1年生対2年生の紅白戦を行った。結果は3対2で2年生が勝利し先輩としての面子をかろうじて守った形になったが、互角の戦いを演じた1年生に拍手を送りたい。
まずゲームをつくる上で重要な「バッテリーを中心とした守り」という面で大崩れしないところが大したものだ。大抵の1年生は四死球とエラーでゲームを壊してしまうが、今年の1年生に限ってはそこの心配が少ない。「野球は勝つ方が何か特別なことをするわけではなくて、負ける方が勝手に潰れていくだけ」というのが私の持論で、それは学童野球も中学野球も、高校野球も大学野球も、社会人野球もプロ野球も、どのカテゴリーにおいても同じ。バッテリーを中心とした守りの堅いチームは自ら潰れる要素が少なくなるので、自然とゲームに勝利する可能性も高くなる。もちろん守りだけではなくて、1年生としてはバットが振れる選手、足を使える選手もいるので、彼らが3年生になった時のチームは本当に楽しみだ。
大下の立ち上がりのストレートにはキレがあった。中学2年生のこの時期であれだけのストレートが投げられるなら、やはり来年が楽しみだ。今後の課題としてはそのストレートと対になる変化球を1つ持つこと。そしてその球種の使い方を学んでピッチングを覚え、調子の悪い時でもゲームメイキングが出来るピッチャーになっていってもらいたい。ピッチャーは速いボールを投げることが目的ではない。そのピッチングでチームを勝利に導くこと。そしてピッチングとはマウンドからキャッチャーに投げることだけのことを指すものでもない。投球後は守備をして、走者を置けば盗塁との駆け引きがある。「勝てる投手」とは大抵コントロールが良くて四死球が少なく、牽制やフィールディングの上手い投手だ。真のエースまでの道のりは長い。だけど大下ならきっとやれる。
「アウトコースのボールを強くスイング出来るようになる」ということを目標に3週前から基礎体力づくりメインの練習に切り替えたが、この紅白戦においてもまだそのボールを振りにいけない打席が目立った。それは1年生も2年生も同じ。それはつまりスイング軌道だったりボールを懐まで呼び込むことだったり、アウトコースのボールをしっかりスイングして捉えるという感覚をまだ選手達の身体が分かっていないということだと思う。「振りにいけない」ということは「ボール」に見えているということ。その原因は身体が開き方向に動こうとしていることだったり、ポイントが遠過ぎることだったり、選手によってそれぞれだと思うが、アウトコースのボールに対してしっかりとスイングをして強くコンタクトする経験を沢山することによって、そのズレを修正していけると思っている。
投手からすると、引っ張り専門でアウトコースのボールを苦手としている打者ほど打ち取りやすい打者はいない。デッドボールや長打のリスクを負ってインコースに投じることなくアウトコースの出し入れのみで打ち取れるからである。特に私のようなサイドスロー、アンダースローで生きてきた投手にとってそんな楽なことはない。しかし反対にアウトコースをある程度打てる打者を相手にするなら、1球はインコースを攻めて意識付けしなければならなくなる。インコースへ投じるにはより繊細なコントロールが要求される。ボール1個分厳しくなり過ぎればデッドボールになるし、ボール1個分甘くなれば長打を浴びる可能性があるからである。だからインサイドへしっかりと制球出来る投手というのはかなりレベルが高い。投手の原点と呼ばれるアウトコースのストレートの制球力がある程度確立された投手でなければ、インコースへはなかなか突っ込んでいけない。中学生レベルでこの技術を身に付けている投手はまずいない。もっと言えば高校生でも甲子園を狙えるような学校のエースクラスでなければその能力は持ち合わせていないと言っても過言ではない。
つまり中学生レベルの投手ならアウトコースのボールを打ててしまえばほぼ怖い投手はいなくなるということだ。極稀にスーパー中学生のような投手がインコースへしっかりと制球しているところを見たことがあるが、18年も中学生の野球を見て来て僅か数人程度だ。
25期生チームはある程度守ってゲームはつくれると思うが、一発長打を打てる選手も足を使える選手も今のところいない。だから攻撃における得点パターンというか、攻撃における「武器」が無いというのが現状だ。そんな中、単打で良いから打って繋げられる、少ないチャンスでしぶとく一本タイムリーを打てる、そんな打「線」にならない限りトーナメントを勝ちあがるのは難しい。その為にもアウトコースのボールをしっかりとスイングし、強くコンタクト出来るようになるのはこの冬のマストとなる。みんな意識して取り組んで欲しいと思う。
ちなみに、インコースの厳しいコースを打つのはアウトコースを打つよりもよっぽど難しい。インコースへ投じることの出来る投手が一流の投手なら、インコースを打てる打者が一流の打者である。インコースを捌けるバッターというのは天性のモノとも言われる。巨人の坂本選手はその代表格だ。投手がまずアウトコースのストレートから練習するのと同じで、打者もまずアウトコースを打てるように練習するのが基本で良いと思う。