2023年2月12日(日)
練習 @坂東グラウンド
目標としてきた春季東東京支部大会を来週に控えた最後の週末。10日(金)の雪の影響もあって土曜日はトレーニング系の練習にとどまったが、日曜日は坂東でとってもいい天気のなか1日目一杯練習が出来た。午前中はしっかりバットを振って、午後は紅白戦を行い実践感覚を養った。まだまだ道半ばのチームではあるけれども、「フィジカルを鍛え直そう」とミーティングをした5カ月前と比べたらみんな本当に力が付いた。来週から始まる大会ではこの5か月間でやってきたことを思う存分発揮して欲しいと思う。
今週末は21期生OBの林虎之介が活動に参加してくれた。彼は現在白鳳大足利高校の3年生。来月3月に卒業式を迎え4月からは野球特待生として石巻専修大学に進学し大学でも野球を続けることが決まっている。愛称はトラ。
高校時代は2021年秋季栃木県大会で優勝しベストナインを獲得。関東大会でも1回戦を突破して「あと1つ勝てば甲子園」というところまで勝ち上がった。残念ながらセンバツ出場は叶わなかったが、我がチームのOBとして誇らしい成績をおさめてくれた。そして野球が大好きで今後も野球を出来る限り続けたいと思ってくれていることが何よりも嬉しい。「野球の楽しさを伝えたい」というのが私の大目標だからだ。
彼との縁は私の中学時代まで遡る。私が当時所属していた「東京ニュータイガース(現東京和泉シニア)」というチームで、共に汗を流していた1つ上の先輩の息子なのだ。名前は林信也さん。私はピッチャーで信也さんはキャッチャーだったからバッテリーを組むこともあったし、「荒川道場」に共に通う仲でもあった。「荒川道場」とはあの世界のホームラン王、王貞治さんを育てたことで有名な荒川博さんの家にバッティングを教えてもらいに行っていたのだ。毎朝6時に幡ヶ谷にある荒川さんのご自宅まで一緒に自転車を漕いで通った。7時半頃までバットを振って朝ご飯をご馳走になり、そこからまた自転車で家に帰って学校に行くという毎日だった。
今思えば何と贅沢なことだったかと思い返されるが、当時は早起きすることも嫌だったし、荒川さんの指導の内容が理解出来なくて素直になれない自分がいた。中学生らしいと言えば中学生らしかったのかも知れない。ただ信也さんと自転車を漕いで通ったこと、時には近くのステーキ屋さんで夕飯を一緒にご馳走になったこともあって、それらは楽しい思い出として鮮明に覚えている。
私が東京和泉シニアの監督となって初めて新入生を迎える年、そんな信也さんが息子を連れて我がチームの体験に来てくれた時は運命めいたものを感じた。息子は中学時代の信也さんと瓜二つ。身体つきから醸し出すヤンチャ坊主な雰囲気、おまけに「肩が強い」という野球選手としてのセールスポイントまで一緒。当時まだ新入団選手が0人という中、真っ先に入団を決めてくれた。体験すらも他チームに全く行かず、「すすむ(私の名前)に預ける」と言ってくれた。その男気に絶対に応えたいと思った。
私の母親は義理人情を大切にする「ザ・昭和の女」といったような人で、「人との縁を大切にしろ、恩を仇で返すようなことはするな、卑怯なことはするな」と言われて育った。どれだけその教えを守れているか分からないけれど常に意識はしているつもりだ。だから、「監督として何人の選手を新入生として迎えられるか」と不安に思っていた私を助けてくれた信也さんには、トラを育てて高校野球界へ送り出すことで恩返ししたいと思っていた。
でも私が何もしなくても彼は自分で道を切り拓いていった。中学時代は反抗期もあって人の言うことは聞かないしワガママで手を焼いたが、野球の能力は確かなものがあった。あの時も1学年10人前後で人数は少なかったが他のチームメイトにも力のある選手がいて、2017年秋季関東大会出場、2018年立川ロータリー杯優勝、2018年新座市長杯優勝、2019年オーシャン杯準優勝、2019年春季関東大会出場といった成績をおさめた。
足利シニアさんとオープン戦をさせて頂いた際に、島崎監督さんに「いいショートだねぇ。白鳳大足利に推薦していい?」と言って頂き、次週には当時の白鳳大足利高校の監督さんであられた藤田監督さん(現白鳳大学監督)が試合を観に来て下さった。試合後には「一番良い条件でお待ちしています」と言って頂き、父親である信也さんが病気したことも気にして「特待生で行ける学校じゃないと野球はやりません」と言っていたトラの希望と合致した。とっても素敵なご縁を頂いたと思っている。
そんなトラが3年間の厳しい高校野球寮生活を終え、中学時代にあった「角」が少しとれて、格好いい青年になって帰って来てくれた。午後に行った紅白戦の時には試合の合間合間で中学生達にアドバイスしてくれて、最後のポジション別ノックではワンプレーワンプレー丁寧に教えてくれていた。もう私では分からない内野手特有の専門的な知識ばかりで、ノックを打ちながら私も耳を傾け勉強させてもらった。教え子に教わる。こんなに嬉しいことはない。
大学野球の練習開始は3月頭とのこと。2月いっぱいは東京にいるというトラに私に何かしてあげられることはないかと想い、現在日本通運で活躍する9期生OBの木南に頼んで、1日体験練習参加をお願いした。アマチュア野球界最高峰の技術と意識レベルの高さを肌で感じ、そこに憧れを抱き、そしてそこを目標にまた4年間野球に打ち込んで来てくれればと想う。もう私がトラにしてあげられることは限られているが、それが「信也さんの男気」に対する恩返しになり、そして母親の教えを守ることになると信じている。