2024年5月26日(日)

 

 夏季関東大会3回戦 対中本牧シニア 0対4 〇 @保土ヶ谷球場

 

 26期生の夏が終わった。1年間目標としてきた夏季全国大会出場は、またしても高い壁に阻まれ夢と散った。

 

 26期生中心チームの最後の相手となった中本牧シニアさんは、創部から40年以上の歴史を持ち数多くのプロ野球選手を輩出している超名門チームだ。そして昨夏の全国大会準優勝、今春の全国選抜大会優勝、関東大会優勝と、今乗りに乗っているまさに日本一のチーム。東京和泉シニア史上最大級の挑戦となった。

 

 でも26期生達は「この日本一のチームを倒し、全国大会へ行く」と本気で考え準備をしていた。私から提案したテーマは「憧れるのをやめましょう」だった。SNSでも度々取り上げられているのを目にすると、勝手に超強大なチームに思えてきてしまう。日本一になるのだから普通のチームでないことは確かだが、「実力以上に過大評価するのはやめよう」と選手達に伝えたかった。そして私達監督・コーチ陣もそれを自分自身に言い聞かせるようにした。選手達はその意味をちゃんと理解し実践してくれた。SNSを逆に利用して冷静に分析をし、イメージを膨らませて準備をしていた。試合前も程よい緊張感でウォーミングアップをこなしルーティンを消化していった。明らかに良いメンタリティーで臨めている選手達を見てとても頼もしかった。

 

 円陣を組んで気合いを入れたあと、ベンチ前に整列して選手達と肩を組み、スタンドの1・2年生、さらにはご父兄も一緒に『君に捧げる応援歌』を唄った。先週の常総シニア戦の時に外野で円陣を組み同じ歌を唄った際、これをスタンドにいる人達も一緒に唄えないか?と思った。我がチームは普段から三位一体の活動を目指していて、「ベンチ入り出来なかったスタンドの選手と、さらにいつも多大なご協力を頂いているご父兄の方々とも一緒に戦うんだ」という気持ちを、何とかカタチに出来ないかと思ったからだ。日本一のチームへの挑戦だ。東京和泉シニアに関わる全ての人の力を結集して挑みたかった。故野村克也監督の言葉を借りれば、奇跡を起こすにはそういった「無形の力」が必要と思ったところもある。とにかく出来ることは全てやり尽くしてゲームに入りたかった。

 

 保土ヶ谷球場に東京和泉シニアの歌声が響き渡った時、スタンドと一体になれている感覚が確かにあった。グラウンドレベルから見上げたスタンドの景色と、共鳴して聞こえてきた皆の歌声は、きっと一生涯忘れない。

 

 しかしやはり日本一のチームは強かった。正直に言って完敗だ。大会のプレッシャーなどに負けて力を出し切れなかった訳ではなく、今持てる力を十二分に発揮しぶつけても届かなかった。特にピッチャーは私の想像を超えていた。間違いなく私が20年中学野球を見て来てナンバーワンのピッチャーだ。何が素晴らしいってやはり確かな制球力。それを生み出しているのは力感の無い投球フォーム。あれだけ脱力して腕を振れるピッチャーは、高校、大学、社会人、プロといった上のカテゴリーでもなかなかいるものじゃない。持って生まれたものか、努力して会得した技術か、それは分からないが、中学レベルを遥かに超えている。

 

 力感の無いフォームから伸びのあるストレートが来るので、見た目との錯覚を起こしどうしてもタイミングが遅れる。そして同じ腕の振りで緩い変化球を投じカウントを稼ぐことも出来る。フォームの再現性が高く自分の思ったところに制球出来るので、常に自分の「間」でピッチングを組み立てていくことが出来る。だからセットに入ってから長く持ったり、逆にクイックで投げたり、打者との間合いの駆け引きも含めてピッチングが自由自在になる。反対にストライクをとるのに汲汲してしまうピッチャーは、余裕が無いから「間」を変えるといったところにまで気が回らない。さらに抑え込もうとして力みが生じ打者からタイミングを合わされやすくなる。「やはりピッチャーで一番大事なのはコントロールだ」と改めて思わされた試合だった。

 

 被安打2、四死球2、失策0、毎回の11奪三振を喫し、3塁を踏ませないピッチングで完封された。出塁をしても牽制が上手く、投球間隔も1球ごとに変え、ランナーの様子を見ながら投球されるので動こうにも動けなかった。1回戦、2回戦とコールド勝ちで勝ち上がった我がチームの攻撃力を完全に封じられた。

 

 試合後、「数々のチームが中本牧シニアさんに挑みコールド負けを喫してきた中で、0対4は立派。ナイスゲームだった」と労いの言葉をかけて下さった人は沢山いた。だけど目標達成ならず泣きじゃくる26期生達を前に「ナイスゲームだった」とは言いたくなかった。本気で「中本牧シニアさんを倒し全国大会に出る」と言って取り組んでいた彼等に、負けたゲームをナイスゲームと言うのは失礼だと思った。だから仙台育英の須江監督の言葉をお借りして「人生は敗者復活戦だ」と言った。「この負けを必ず次の勝ちに繋げろ」と、そういう想いだった。

 

 26期生が春季東東京支部大会でチーム史上初めて単独3位となりシードチームとして春季関東大会に出場した功績他を称えていない訳じゃない。練習中の取組みも含め、過去の東京和泉シニアの卒団生達を振り返っても、ここまで一人ひとりが自立したチームは初めてだと思う。4回終了時のグラウンド整備の時間、ベンチの中で選手達は作戦を練り直していた。ピッチャーの印象を皆で共有し、どうやって打ち崩そうかを話し合っていた。誰に言われる訳でもなく、自然とそういうことが出来るチームになった。私が目指してきた「自走する集団」に彼等はなりつつあるのだ。そんな彼等なら、きっとこの悔しい敗戦を必ず糧に出来ると信じている。だからこそ、「よく頑張ったね」の労いの言葉だけで済ませたくなかったのだ。もっともっと成長できるハズだ。

 

 この度、2024年夏季関東大会は3戦で終えることとなった。しかし3戦共に、試合後必ず我がチームの雰囲気を褒めて下さる人がいた。対戦チームの監督さん、あるいは審判さんであったり、大会本部の方だったり…。それは春季東東京支部大会5戦、春季関東大会1戦も同じだった。勝っても負けても共通して、「みんな元気があって明るくていいチームだね」と言って頂けた。この度の中本牧シニア戦後は、相手チームのコーチの方に「スタンドも一緒になって戦うチームの雰囲気がとても良いですね」と高岡コーチがお言葉を頂いたそうだ。日本一のチームに一つでも評価して頂けたこと、こんなに嬉しく誇らしいことはない。見ている人はちゃんと見てくれている。感じる人はちゃんと感じてくれている。

 

 それはきっとチームが醸し出す「陽」の雰囲気が周りの人にそういう印象を与えているのだと思う。野球というスポーツを心から楽しみ、選手もスタッフもそして親御さんも、大変なことがあったとしても皆が楽しく笑顔で活動していくことで、人が集まり、人に愛され応援されるチームになる。まさに「楽しくやって強くなる」、チーム理念通りである。人の悪口を言ったり、チームの陰口を言ったり、グラウンドでも罵声を浴びせることばかりでギスギスとした雰囲気で活動していたら、きっと「陰」のエネルギーが溜まってしまい試合後にチームの雰囲気を褒められることなど無いだろう。

 

 選手達が試合前、スタンドを見て言っていた。「めっちゃ応援来てくれてる。他喜力マックスだ」と。私もスタンドを見上げ応援の多さに驚いた。相手は中本牧シニアさん。そして試合会場はサーティーフォー保土ヶ谷球場。人に「見たい」と思わせる条件が揃ったことも確かだが、それと併せてやはり応援されるチームになってきたということだと信じたい。人数を多く抱えるチームは、きっと1年生は応援ではなく別で練習しているだろう。だけど私は夏の大会は全員で挑みたいと思っている。あの3年生の戦い様を1年生に見て欲しいと思っている。別で練習するよりもよっぽど学ぶことが多いハズだから。

 

 悲願の全国大会出場は今年もならなかった。監督になって7回目の挑戦。コーチ時代から数えれば20回目。毎年負ける度に卒団していく3年生に向け「必ずより良いチームにして君達の敗戦に報いる」と約束していながら結果が伴っていないのは、本当に私のリーダーとしての力量の無さを痛感する。ただ沢山のOBやこれまでチームに尽力してきたスタッフ、そして親御さん達の力を積み重ねてきたお陰で、東京和泉シニアは一つステージを上がった気がしている。そんな手応えを感じずにはいられない夏の大会だった。そんな新たな景色を見せてくれた26期生達には心から「ありがとう」を言いたい。でもまだまだ通過点。今年は第1回林和男旗杯東西対抗卒業生大会があるし、サードフレンドリー杯もある。12月までは東京和泉シニア26期生としてもう少しだけ活動しもらう。活動を通じてお互い学び合い、成長していきたい。後輩達も育てて欲しい。夏の大会の終わりがお別れではなく、新たなスタートとして捉え歩みを進めたい。

 

 立ち上がろうとする 君に捧ぐ 君への応援歌 全力注ぐ

 いつか辿り着く その時まで 希望を胸に 扉開いていこう

ページ最上部へ戻る