2024年8月11日(日)
オープン戦 対足利シニア 1対11 ● @足利シニアG
大会前にはなるべく足利シニアさんとオープン戦を組ませて頂いている。毎年関東大会には顔を出し、2019年には全国大会にも出場している強豪チームであるということももちろんだが、それ以上に足利シニアさんの元気の良さ、チームとしての一体感、選手同士や指導者スタッフからの声掛けを含めたベンチワークなど、チームとして学ばせて頂くことも多く、大会前にそういうチームを相手に緊張感のあるゲームをやっておきたいという想いがある。この度は3戦ともに完敗だったが、それでもやはり足利まで足を運んだ価値はあった。力のあるチームを相手に3投手を継投するカタチを初めて試すことが出来たし、チームとしての課題を再確認することも出来た。
ここ数週間、忘れ物や遅刻、欠席をしてしまう選手が何人かいた。夏休みに入ってから熱中症対策として6時半に秋ヶ瀬に集合して13時まで活動するという午前中の練習スケジュールを組んでいる。その為私も4時過ぎの起床になっているし、お弁当を用意するお母さん方はもっと早起きしていることだろう。そんな影響もあるのかも知れない。
私が学生だった頃は忘れ物をすればグラウンドに入れてもらえなかったし、1日練習を休んだだけで1ヶ月間寮から外出禁止にもなった。周りを見渡せば規律を守る為に未だに厳しいペナルティを課しているチームも確かにある。でも私はそうはしたくない。忘れ物や寝坊なんて人間なんだから誰でもするものだ。大事なのはそういう失敗した後の行動である。
足利シニア戦の朝、工藤コーチが遅刻してきた。お盆休みによる東北道の渋滞につかまってしまった為だ。それは仕方のないことだが、工藤コーチはグラウンドに着くなり中学生達に頭を下げ、そしてベンチでは誰よりも声を出して頑張っていた。そういう人間は信用される。正直に自分の失敗を認めて謝罪をし、その失敗した分を取り返そうと一生懸命になれる人間。そういう人に対しては少なくとも私は信用する。反対に色々言い訳をしたり嘘をついたりして取り繕い、自分の失敗を正当化し、「自分は悪くない」という風に持っていこうとする人、そういう人は信用できない。
仕事も同じ。大事な打合せで必要な書類を忘れてしまったり、うっかり時間を間違えていて遅刻してしまったり、前の晩に飲み過ぎて朝起きれなくなってしまうこともある。でもその時にどのような行動が出来るかが、評価される人とされない人の分かれ道になると思っている。社会で成功している人は失敗から学び、またそれをチャンスに変えられる人である。私はこの東京和泉シニアの活動を通じてそういうことを選手達に教えていきたい。
ペナルティを課して従わせるだけではその能力を養うことが出来ない。そもそも野球は失敗するスポーツである。どんなに良いバッターでも10回打席に立って7回は失敗するのだ。でもその失敗を守備や走塁で取り返すことが出来るし、次の打席で再度成功へのチャレンジも出来るスポーツなのである。それに、チームとしての規律は上からの圧力によって「つくられるもの」ではない。勝つ為に「これだけは絶対に守ろうね」と皆から自然発生的に「生まれてくるもの」こそ本物の規律である。中学生がそういうことを理解して自らを律することが出来るようになるまでには、ある程度の時間が必要だと思っている。まして思春期を迎えている彼等は心が不安定である。ちょっとだけ彼等より先にこの世に生まれて多くを経験している我々大人達が、彼等の成長を木の上に立って見守っていてあげられるチームでありたい。「先生」は「先に生まれる」だし、「親」は「木の上に立って見る」と書くのだから。
中には「それは理想論だ」とか「そんな甘いことを言っていたら統制がとれなくなる」、「秩序が保たれない」などと言う人もいる。でも私はそういう言葉を聞くと「世間の狭い人だな~」と思ってしまう。「やったことも無いのによくそんなこと言えるな」とも。私の考え方として、「世の中こうでなければいけないということは無い」と思っている。それに現代の子供達は我々が子供だった頃よりも「あれやっちゃいけない、これやっちゃいけない」が多く、故に失敗することに凄く怯えている傾向がある。もし私がこの東京和泉シニアの中でもチームの規律を守る為に白黒をハッキリさせるような厳しい線を引いてしまったならば、選手も親御さん達も益々息苦しくなってしまうだろうと思う。
ハッキリ言って失敗を許容することなくペナルティを課して従わせる方が簡単だ。でもそれでは上からの圧力が無ければ「悪いことをして良い」ということになってしまう。要するに良いことと悪いことの判断の区別がつかないということ。私は自分が監督するチームからそういう人間を輩出したくない。チームの勝利や目標達成の為に自分が何をしなければならないのか?それを考えられる人間、モラルを持って行動出来る人間を育てたい。育つ環境を提供してあげたい。
今後益々多様化していくだろう社会を生き抜いていかなければならない中学生には、そういった能力が必ず必要になると思うのだ。失敗を恐れずチャレンジしていく勇気、失敗したあとの行動、そして組織に貢献する為に自分がどんな行動をすれば良いのかを考えられる力。僅か2年と8ヶ月という短い期間だが、その間に我が東京和泉シニアでの活動を通じて、少しでも良いからそういうことを学んでもらえたのなら、こんなに嬉しいことはない。