2023年2月27日(月)。
「監督の日記」をスタートして1年が経った。もともと試合があった時はその記録を残しながら自分の采配を振り返って反省するというのがルーティンであったから、ホームページに載せるか自分のパソコンにデータを溜めておくかの違いがあるにせよ、やることが増えたとすれば練習だけの週に記録を残すことくらいだった。一応毎週毎週1度もサボることなく1年間続けて来れた。「練習の時にそんなに書くことあるかなぁ」なんて最初は思っていたけれど、毎週毎週違った表情を見せてくれる中学生のことを思い浮かべたら、逆に想いが溢れてしまって「文章が長くなり過ぎないように」と気を付けているくらいだ。だけどいつも長くなってしまう(笑)
嬉しかったのは小学生チームにご挨拶に行った時、指導者の方から「毎週楽しみに読ませて頂いています」と言って頂けたことだ。「お恥ずかしい」とも思ったが、仕事も家庭もある中で時々心折れそうになることもあるから、「楽しみに読んでくれている人がいる」という事実を知っただけで、「何とか頑張って続けよう」と思えたことは確かだった。ネット上に書くということには一定の怖さもある。だけど私が41年生きてきた中で34年もの間携わることで培ってきた、野球というスポーツに対する知識や構築されてきた考え方、そういったことにご賛同頂ける方達と、この日記を通じて出逢い一緒に野球が出来たならなお嬉しい。
アマチュア野球界は今、野球人口減少に加えて「二極化」という問題を抱えている。「人数が集まるチーム」と「そうじゃないチーム」というように勢力図が二極化しているという問題だ。主に中学野球と高校野球が顕著に見られる。我がチームもこの影響を受けて部員獲得に苦労している。
人数の集まるチームはまずお金が潤う。近年は少年野球をビジネスにする人も増えてきているが、基本指導者はボランティアである。しかし指導者が給料を受け取らない代わりに、チーム道具や遠征費他のチーム運営費は各家庭から頂く部費で賄うカタチが殆どだ。だから人数の多いチームは練習環境を整えやすい。チームによっては「ラプソード」などプロ野球チームで使用するような最新機器を導入して選手育成に役立てているチームもある。トレーニングルームを建設しトレーナーを数名雇うなど、高校・大学顔負けの施設を整えている中学野球チームまで存在する。そしてそういったチームは世間の注目度も高く、YouTubeなどでチーム紹介もされ、益々人が集まる流れを生んでいる。人が集まれば当然有能な選手が揃う可能性も高くなり大会での成績も良くなる。良い選手は基本的に「強いチームに行きたい」と思うから、より有能な選手が集まりより良い競争を生み、より良い大会結果を生み出す。まさに組織が正のスパイラルにまわっている。
対して人数の集まらないチームは大抵が貧乏チームだ。お金によって環境を良くすることは難しい。絶対数が少ないから有能な選手が集まる可能性も必然的に低くなる。よってチーム内の競争も乏しくなかなかチーム力が上がっていかない。野球は弱者が強者に勝てるところがこのスポーツの面白いところであり、中学野球の大会はトーナメント制が殆どだから時々番狂わせも起きたりするが、しかしたかが1回弱小チームがビッククラブに勝利したところでその勢力図が変わるかと言えばそうではない。人数の集まらないチームは負のスパイラルの中にいるのだ。
ただ我がチームのそのような現状を正当化するわけではないが、だからと言って良い活動が出来ない訳ではない。私が東京和泉シニアの監督になって6年が過ぎたが、この間に関東大会へ3度出場、林和男杯や東日本選抜大会といった全国大会にも出場を果たしている。新座市長杯や立川ロータリー杯、オーシャン杯といったローカルな大会では優勝も経験した。また卒団していったOB達が各都道府県を代表する強豪高校で活躍している事実もあるし、ビッククラブ出身の選手からレギュラーを奪った例もある。人数が少なければ試合経験を多く積めるし、ボールを捕る数、バットでボールを打つ数は、3年間で相当数にのぼる。人数の多いチームには実現出来ない数のハズだ。そういった基礎練習を数多く中学時代にこなしたことが、高校野球で役立ったと言ってくれるOBもいる。
環境はあればあったでそこに甘えが生じてしまうこともあるし、勘違いを生んでしまうこともある。逆に無い環境の中で工夫して育っていく選手もいる。今まで18年、東京和泉シニアで250人近い中学生を見てきて思うのは、どのチームでやるか?ではなくそのチームで何をやるか?であると思う。結果を残しより上のステージまで生き残り野球を続けている選手は、総じて置かれた環境に言い訳をしないしその中でどうしたら自分を高められるかといったことにフォーカス出来る選手だ。だから私は時々選手及びご父兄の皆様にも話している。その昔アメリカの大統領だったJ・F・ケネディさんが言った「国に何かしてもらおうと思うのではなく、あなたが国のために何が出来るかを考えて下さい」という言葉を例に出し、「チームに何かしてもらおうと思うのではなく、チームの為に何が出来るかを考えて下さい」と。そしてそれは監督である私を含めたチームスタッフも同じことだ。
この日記にそういった世間に知られない我がチームの活動の内容、メリット・デメリットといったことを正直に発信することで、我がチームに興味を持ってもらう人が増えてくれたら嬉しい。もしそれがキッカケでビッククラブに流れていた選手が一人でも我がチームに入団してくれることがあったならば、二極化問題打破への一歩となることと思う。
私は野球が大好きだ。そして野球に育てられた。大好きな野球を私が続けられる場所は、現在東京和泉シニアしか見当たらない。今いる現役中学生の選手達、卒団していった数多くのOB達、その人達の為にもこのチームが無くなってしまうことだけはどうしても避けたい。時代は平成から令和へと変わり、中学野球も求められることが多種多様を極め、指導者という立場の人は難しい時代を生きることとなった。常にアンテナを張って考え方をアップデートしながら、未来永劫このチームが存続していけるようにこれからも努力を惜しまず頑張っていこうと思う。来年もまた「一年続けられた」とここに記せるように。