2023年3月19日(日)
練習 @坂東グラウンド
土曜日は金曜日の夜から降る雨により活動を中止にした。夏の大会までの残り少ない日数を考えるとたった1日とはいえされど1日だ。監督になったばかりの頃はこんな雨の日も無理矢理活動していた。秋ヶ瀬の羽倉橋の高架下で素振りをしたり、基礎練習をしたり、そうした小さな積み重ねが最後の夏の大会の勝負を分けると信じていた。それはそれで意味のある時間だったと振り返れるが、どちらかというと活動していないと私自身が不安で、私自身を納得させる為だったようにも思える。「野球を通じて選手達の自主自立を促したい」ということを指導方針の柱としているクセに、その1日を選手達に任せるということが出来ないようでは矛盾していることになる。もちろん今でも不安が無い訳ではないが、選手達が夏の大会に向けた土曜日という1日を過ごしてくれたと信じているし、また野球を忘れて友達と遊んだり、家族と過ごしたりという束の間の普通の週末を過ごしてくれていてもまたそれで良いと思う。最近はようやくそういう風に思えるようにもなった。
日曜日は青空の下、坂東で1日しっかり練習した。ここ最近まとまった雨が無くグラウンドの土が乾燥気味だったので、土曜日の雨で逆にグラウンドが回復した印象だ。午前中は少々ぬかるんでいたが、午後には回復して黒土の上に引かれた白線が少し浮き上がって見えて綺麗だった。先週からヒットエンドランを練習している。盗塁とバントの他に走者を進塁させることの出来る手段を増やす為だ。春は新2年生がレギュラーとして多く出場するチームだっただけに、新3年生で肩の強いキャッチャーが相手になるとなかなか走れなくて得点パターンをつくれなかった。夏の大会までの短い期間の中で、足を速くするとかフィジカル面での大幅なレベルアップは見込めないだけに、チームとしての武器を増やす考えだ。選手達がどれだけ意識を持って取り組んでくれるだろうか。
WBCは佳境を迎えている。我らが侍ジャパンは明日21日(火)にメキシコを相手に準決勝を戦う。東京和泉の活動があるからリアルタイムで見られないのが残念だ。俺だけ休もうかな(笑)。準々決勝のイタリア戦は大谷劇場だったように思う。もちろん不振にあえいでいた村上選手の一打や、岡本選手の5打点の活躍、吉田選手待望の一発や怪我をおして出場した源田選手の華麗な守備とタイムリー、そしてダルビッシュ選手13年ぶりのリリーフ登板など見所満載だったわけだが、その中にあっても大谷選手のただひたすらにチーム勝利を目指したその姿に私は心が震えた。
マウンドに上がった大谷選手は初回から一球一球声をあげて腕を振っていた。その気迫がテレビ越しでもヒシヒシと伝わって来た。だから同じグラウンドレベルにいた侍ジャパンナインにそれが伝わらないハズがない。あれを見た野手陣が燃えないハズがない。そのプレーでナインを引っ張る。まさにエースの姿。3回にはセーフティバントでチャンスを拡大。相手チームも、ファンも、試合を観ていた人誰もが意表をつかれたシーンだったが、栗山監督は試合後の会見で次のように話した。「翔平らしさが出る時っていうのは実はああいう時で、投げるとか打つとかそういったことは別として、この試合を絶対勝ちに行くんだという野球小僧になりきった時に彼の素晴らしさっていうのが出てくる」と。日本ハムファイターズの監督時代から大谷選手を見てきた栗山監督は、ご自身の著書でも大谷翔平選手について同じようなことを綴っていた。野球はチームスポーツだから、自分の欲を優先したりすると個人の結果は悪くなる。逆にチームが勝利する為に自分が今何をしなければいけないのかということを考えられる選手、個人よりチーム勝利を優先出来る選手は結果個人の成績も良くなり評価される。一流選手は根底に必ずこのメンタリティーを持ち合わせている。「大谷選手の為にチームがあるんじゃなくてチームの為に大谷選手がいる」ということを、誰よりも理解しているのが大谷選手自身であるということだ。リアル二刀流どころかリアルエースで4番。それを侍ジャパンでやってのける大谷選手。凄すぎる…。
承認欲求という言葉がある。「他者から認められたい。自分を価値のある存在として認めたい」という欲求だ。私も30代前半まではこの欲が強かった。人に評価して欲しくて仕方がなかった。自分のやってきた野球、それによって形成された自分を誰かに認めてもらいたかった。仕事でも東京和泉の活動でも何か成果があがれば自分の手柄のように言いたかったし自慢したかった。でもいつの頃からかそれが「カッコ悪い」ということに気が付いた。それに息苦しかった。他人の評価を得たいと人の目ばかり気にしていると、失敗することが怖くなるし小さな嘘を積み重ねていってしまう。「成功したら自分の手柄、上手くいかなきゃ人のせい」なんてしてたら、いつか誰も力を貸してくれなくなってしまう。他人の評価を気にするより自分の評価は自分でして、それを積み重ねていった結果いつの間にか他人に評価されていたっていうのが理想なんだと思う。イチロー氏が何か節目の記録を達成する度に、記者会見でそういう意味合いのことを話していたように思う。
高木豊さんのYouTubeチャンネルにダルビッシュ有選手がゲストとして呼ばれ、その対談の様子が配信されていた。その中でダルビッシュ選手も「自分が価値のある人間ではないということに気付いてから世界観が変わった」といった意味合いのことを話されていた。「日本の選手よりメジャーの選手の方が人間的に成熟している」、「大谷君のバッティングを見て、スゲ~で終わっている人ばかり。でも大谷君の凄いところはその裏の部分。何を食べてどんなサプリメントを摂取しているかとか、そういうことにはみんな着目しない」とも。
やはり野球力とは人間力。超一流選手はなるべくしてなっている。私がそうなれなかったのは誰のせいでもなく、環境のせいでもなく、私自身に問題があったということ。そう思える私の経験も今後中学生に伝えていけたらなと思う。