2023年9月13日(水)
練習 @松ノ木球場
先日、バスケW杯で日本代表がアジア1位を決め、パリ五輪の出場権を獲得した。自力での五輪出場権獲得は史上初めてとのこと。まさに歴史を塗り替えた瞬間だった。その日本代表で主将を務めた富樫勇樹選手は、身長167cmと今W杯出場選手の中で最も身体の小さな選手でありながら、2mを越える世界の選手たちと堂々と渡り合い、日本代表の躍進を支えた。最近は色々な競技で世界を舞台に活躍する日本人アスリートが増えている。
富樫選手は、当時お父さんが監督をしていた新発田市立本丸中学校バスケットボール部で3年時に全国大会優勝を達成し、多くの強豪高校から誘いを受けたそうだが、全て断って単身渡米しアメリカの高校へバスケットボール留学をしている。弱冠15歳。英語も全く分からない。そして2m級ばかりの高校生の中に混ざってプレーすることに挫折を味わったという。生まれて初めて「試合に出たくない」とも思ったそうだ。しかしその中で、「人と比べるのではなく、自分は自分。小さいから出来ないじゃなくて、小さくてもやれることに全力を尽くそう」というメンタルに行き着いたそうだ。そしてそのメンタルは今もプレーする上での富樫選手の軸となっているという。
確かつい半年くらい前に放送された『ゲットスポーツ』という番組で特集されていた内容だが、これを観たとき、「あぁ、なんか野球って世界が狭いなぁ」って思った。15歳っていう歳でウチのチームの中学生が海外留学とか考えられるだろうか?言葉も文化も違う世界に飛び込んでいってそこで道を切り拓いていくって並大抵のことじゃない。例えばサッカーにおいても久保建英選手は10歳でスペインのFCバルセロナの下部組織クラブに入団している。
それに比べて野球はどうだろうか?もちろん日本野球は3月に行われたWBCでも優勝して世界一になり、長らく世界ランキング1位の座をキープしている。今月10日に決勝戦が行われたWBSC U18ワールドカップでも、日本代表は台湾を破って優勝した。国内に大きなプロリーグも持っているし、さらに学生野球も盛んだからわざわざ海外へ行って学ぶ必要性が他協議に比べて少ないと言えば少ない。「甲子園」や「神宮」という学生野球の文化もあって、それはそれで海外の球児たちが羨むような環境が整っていると言っても過言ではない。だけど先日行われていた夏の甲子園で慶応義塾高校の活躍と相俟って世間で大きな話題を呼んだのは、「長髪」か「坊主頭」か、などといったこと…(もちろんそれだけではない)。
私は3年前に発売された慶応義塾高校野球部の森林監督著『Thinking Baseball—慶応義塾高校が目指す”野球を通じて引き出す価値”』という本も発売当初に購入して読んでいるし、仙台育英高校野球部の須江監督の本も読んで、お二人の考え方から学ぶことは沢山あった。むしろ賛同者の1人である。高校野球とか中学野球、学童野球も含めたアマチュア野球界の「良くない」と感じるところ、疑問に思うところとか、常識を疑おうとする気持ちとか、私自身ももう15年以上前から持っていたし、それを声に出しても周りから全然受け入れてもらえないことにストレスを感じ続けていた。でもこの度、慶応義塾高校が優勝、そして仙台育英高校が昨年優勝し2年続けて決勝までコマを進めるという快挙を成し遂げたことで、「変わろう」とする高校やチームが増えていくきっかけになるのかも知れない。それはそれで野球界に与える影響は大きい。だけど、「長髪か坊主頭か」などといったことが世間の議論の中心になってしまうことが、「世界が狭い」と思えてならないのだ。富樫選手が15歳で渡米してから今の地位を築いていくまでに、髪型は関係なかったハズだ。
私は野球を愛している。5歳のとき、叔父に後楽園球場に連れて行ってもらい原選手(現読売ジャイアンツ監督)のレフトポール直撃のホームランを観てから、私の人生は野球一色になった。プレイヤーとしても指導者という立場になってからも何の結果も残せていない私だが、それでも35年も携わってきたのは、このスポーツが好きで、面白くて、楽しくて、そして今はそれを少しでも多くの人に伝えたいと思っているからだと思う。この度バスケW杯で日本代表が歴史を塗り替えたことは、バスケ界の未来にとってとても明るいニュースになるのだろう。多くの日本人アスリートが世界を舞台に活躍することは本当に喜ばしいことだが、他競技が隆盛するということはある意味野球が危機に瀕することとも言える。野球界の中だけにいて考え方が固執してしまうと、色々なことに盲目となってしまうから、他競技から学ぶ姿勢を持っていたい。先週末からはラグビーW杯が始まった。テレビの前に噛り付いて応援しながら、何かを学べたらと思う。
遅くなりましたが、バスケ日本代表、今W杯でのアジア1位ならびにパリ五輪出場権獲得、おめでとうございます。