2023年10月25日(水)

 

 初動負荷トレーニング体験会 @ワールドウイング新宿

 

 私は小学生の頃から「投げ方が良い」と言われていた。中学生になっても高校生になっても指摘されるのは決まってフィジカルの部分。身体が小さく細かった私は「お前は身体ができれば良い投手になれるよ。投げ方は良いから」と各指導者に言われ続けていた。大学生になれば自分がフィジカルで劣っていることがよく分かった。身体の大きな選手達に圧倒され、「これではダメだ」と一生懸命ウエイトトレーニングに励んだ。それだけではない。1日3食4000キロカロリーの寮食に加え、プロテイン、アミノバイタル、クレアチンといったサプリメントも積極的に摂取した。結果3年間で10kgの体重増加に成功。10kg増えても投手陣の中では最も速く走れたし遠投力でもそう他の投手陣に負けなかった。カラダはつくった。しかしマウンドから投じるボールに然程変化は無かった。気付けば大学4年になり春季キャンプで広島の呉二河球場に立っていた。入寮したばかりの新1年生で同キャンプに帯同した選手が軽々と140kmを超えるボールを投じる。私のその時の最速は128km。愕然とした。「身体ができれば良い投手に?結局身体ができても良い投手になんてなれないじゃないか。俺には才能が無いのだ」と打ちひしがれていた。

 

 大学4年の秋のシーズン。私はプレイヤーを諦めチームの手伝いにまわっていた。大学4年生は就職活動もあるし、私の場合は教職課程を受講していて教育実習もあったので、その立場になった方が動きやすかったのだ。練習中の仕事としてはバッティングピッチャー、バッティングキャッチャー、ブルペンキャッチャー、ノック、グラウンド整備他といったところになる。しかしそれ以外の時間は自由時間となるので、この際だからと色々研究してみることにした。球の速い投手というのはどういう投げ方をしているのか?と、当時プロ野球界で活躍していた松坂大輔投手や新垣渚投手といった、快速球を投げる投手の連続写真を穴が空くほど見た。そこで一つ共通点を見つけた。せっかくだからとその真似をしてキャッチボールをしていたら、ある日キャッチボール相手の同級生が「お前最近球きてるぞ」と言う。面白半分にスピードガンで計測してみたら138kmを計測。うそでしょ?たった3ヶ月、ろくにトレーニングもせずキャッチボールをしていただけで自己最速を10kmも更新。何度投げても130km台中盤から後半を計測する。とうとう分かった。私が悪かったのは褒められ続けていた「投げ方」だったのだと。力を生むのは「コツ」なのだ。力は「出す」んじゃなくて「出される」ように身体を上手く使わなければいけないのだ。もちろん、3年間のトレーニングの成果で、その身体を動かしたいように動かすことの出来るベースが鍛えられていたということもあると思うのだが…。

 

 それから4年後。私が26歳の年に初動負荷トレーニングのジムが池袋に出来たと聞いて驚いた。もともとイチロー選手が取り組んでいたのは知っていたが当時はそのジムが鳥取にしか無かったため、「生きている間に一度は行ってみたいな」くらいにしか思っていなかった。それが東京に、しかも池袋とそう遠くない場所にジムがオープンしたものだから心躍った。早速ジムへ足を運びトレーニングを体験してみたところ、色々なことが腑に落ちる感覚だった。トレーニングした後の方が体が柔らかくなっているというのは不思議だったし、体験後に家に帰っている時の歩きやすさ、今にも走り出したい、ボールを投げたいと思ってしまうような心地よい感覚だった。何より、その時に体験を担当してくれたトレーナーさんが「力は出すんじゃなくて出されなければいけないんです」と言った言葉に、よりこのトレーニングを信じられる確信を得た。私が大学4年の時に感じた感覚そのままだったからだ。

 

 それから16年、途中池袋会員から新宿会員に変わったものの、私はこのトレーニングを続けている。いつまでも走れる身体でいたいし、キャッチボール出来る身体でいたい。今は仕事に家庭に和泉にと忙しく、一週間に一度行けるか行けないかの頻度になってしまっているが、それでもこのトレーニングには価値があると思っている。自分の身体を維持することもそうだが、幾人かのトップアスリートにも出逢いお話しを聞くことで中学生指導に役立てられることもある。印象深いのはボクシング元ミドル級世界チャンピオン村田諒太選手や、ヤクルトスワローズの石川雅規投手、元ソフトバンクホークス新垣渚投手、元阪神タイガース鳥谷敬選手といったところだ。またジムのトレーナーさん達にお話を伺うことで人間の身体のつくりなどを知ることも出来る。私は今後も出来る限り継続していきたい。

 

 先週21日土曜日、私が仕事だったため東京和泉の活動を欠席した。会社帰りにワールドウイング新宿に寄ってトレーニングしていた際に、トレーナーさんから「来週25日水曜日、本来なら休館日なのですけど体験会やってますので興味のある方がいらっしゃったら紹介してください」というお話を頂いた。ふと考えて、「もし良かったらなんですけど、我がチームの子を全員連れていくとかって可能ですか?たぶん30人くらいになると思うのですが…。」と思い切って聞いてみた。そうしたら快く引き受けて下さった。17時~19時、我がチームだけ貸し切りでの体験会。爽快だった(笑)。そんな私のワガママを聞いて下さるのも、16年このトレーニングに励みながらジムスタッフの方々と良い関係を築いてこれたお陰だ。これまでも多くの卒団生がこのジムにはお世話になっている。現在日本通運で活躍する木南やNTT東日本で活躍する堀らもその一人だ。

 

 特に堀は、肘痛に悩まされて病院に行っても治らないから「野球を辞めようか」というところまで追い込まれていた時期があった。そこで私がワールドウイングを紹介した。「騙されたと思って通ってみろ。それで治らなかったら野球辞めてもいい」とまで言った。堀はその後地道に通い、肘痛が解消されて東京和泉シニアのエースになった。進学相談の面談で彼は言った。「初動負荷トレーニングを続けたい。このトレーニングを取り入れているのは山梨の日本航空高校のようです。だからそこに進学したい」と。後にも先にもそんな志望理由で志望校を出してきたのは彼一人だ。彼は日本航空高校に進学しプロ注目の右腕となった。そして今も尚、アマチュア野球界トップクラスの投手として活躍を続けている。

 

 この度、初動負荷トレーニングを中学生達に体験させてあげられたことはとても良かったと思う。もちろんお金がかかることなので各家庭に「入会しろ」なんてそんな強制など出来るハズも無い。でも「こんな世界があるんだよ」と、私の知ってる世界で見せられる世界があるなら見せてあげたい。そこにはまた違った感覚や人との出逢いもあるし、中学生の感性を刺激するには十分な世界が広がっていると思うから。

 

 ワールドウイング新宿のスタッフの皆様、この度は体験会の開催ありがとうございました。また見学に訪れたお母さん方や高岡事務局長、そしてウチのカミさんと5歳の息子にまで体験させて頂いて、とても楽しい時間になりました。頻度は少ないかも知れませんが私は今後も通うので宜しくお願い致します(笑)。このトレーニングを続けていられる限りは、当分のあいだ中学生に負ける気はしません(笑)。

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