2023年12月10日(日)

 

 練習 @坂東グラウンド

 

 我がチームのホームグラウンドとして使用している「坂東グラウンド」は、茨城県坂東市にある、とある工場施設内に位置する。内野は黒土。外野は天然芝。中学生が使用するには十分過ぎるほどの環境がそこにはある。

 

 始まりは2013年、当時中学3年生だった15期生OB梅田(佼成学園→武蔵大学)のお父様が三菱UFJ銀行にお勤めになられていて、金融のお客様だった工場に営業で訪れた際、敷地内にあったグラウンドを見て「こちらを週末にお貸し頂けないか?」と交渉して下さったことからである。当時事務局を担当していた北野さん(15期生OB北野のお父様)と、西田さん(15期生OB西田のお父様)が重機をレンタルしてきてくれて、雑草だらけだった内野を掘り起こし、あとは当時3年生だった15期生と私で、ただひたすらにグラウンド整備を繰り返した。中学生がある程度プレイ出来るようになるまでにかなりの時間を要したハズである。秋から冬にかけて、1・2年生がオープン戦など他で活動している最中、当時コーチだった私は夏の大会を終えた3年生と午前中は練習し、午後はグラウンド作成の日々を毎週送っていた。使い始めた当初は圏央道もまだ完成しておらず、片道2時間弱かかってしまい不便さを感じずにはいられなかったが、今となってみれば中学生にとっても私にとっても貴重な体験だったように感じる。「グラウンドをつくる経験」なんてそうそう出来るモノじゃない。現在は高速のインターがグラウンドから10分弱のところに出来ている。私はマイクロバスを運転して選手達を拾いながら向かうので少々時間がかかってしまうが、自宅からドアトゥードアなら片道1時間もかからない。

 

 その後、一時的に使用出来なくなってしまった期間があったが、再度森井さん(19期生OB森井のお父様)が当時事務局を担当されていて、工場の方に交渉して下さった。使用許可がおりたのち、再度グラウンドを野球らしいグラウンドにして下さったのは、工藤コーチ(11期生OBでもある)のお父様である工藤仁さんだ。使用していなかった期間でまた内野に雑草が生い茂り、荒地状態に逆戻りしてしまっていた。それをまた重機を利用して掘り起こし、砂を混ぜながら整地して水捌けの良い黒土の内野に蘇らせてくれた。またそれ以外にもファールグラウンドの仕切りネットや打撃練習時の防球ネット作成、ブルペン他マウンド作成、ベース・プレートの埋め込みなども全て、工藤さんが力を貸して下さった。今や我がチーム自慢のホームグラウンドである。梅田さんが交渉してくれた日からもう10年の時が経った。

 

 私は工場からお借りしている身として、あるいはグラウンドをグラウンドにして下さった工藤さんに対して、そして子供達が目一杯プレーすることで踏まれるグラウンドそのものに対して、毎週毎週感謝の気持ちを込めてグラウンド整備をしている。私は坂東グラウンドを使用することになったその日からこの10年、ただの一日たりともグラウンド整備を欠かしたことが無い。それは使用する者の礼儀だと思っているし、子供達が大きな怪我などしないようにと願っているところもある。監督だからと言って偉そうにベンチにどっかり腰掛けて、「選手達にやらせるだけ」なんて到底私には出来るハズもない。一番最初のグラウンド作成に苦労して関わっているということも、愛着が湧く一つの原因になっているのかも知れない。

 

 グラウンド整備をしていると、どの部分が凸凹しているとかすぐに分かる。特に雨が降って水抜きをして使用した後などは、各所に高い低いが生まれてしまって元通り平らにするにはかなりの労力がいる。夏には内野に雑草が生えてくるので毎週草むしりをすることになる。過去には「監督はグラウンド整備や草むしりなんかしなくていいからもっと子供に野球を教えてやってください。そっちに時間を使ってください」という親御さんもいた。それは私への気遣いのつもりだったのかも知れないが、私の中ではそれが子供達への何よりの指導だと思っている。私が汗をかいてグラウンド整備している姿、一生懸命草むしりする姿、グラウンドを大事にしている姿を選手達は必ず見て何かを感じてくれていると信じている。グラウンドを大事にすること、それはそこに関わる人への感謝の気持ちを持つことと同じであるのだから。

 

 私の中学時代の恩師はグラウンド挨拶についてうるさく指導する人だった。「君たちは毎週グラウンドにお願いします、ありがとうございましたって言っているけど、それは誰に言っているの?グラウンド挨拶って何の為にするの?」とよく問われた。「グラウンドはね、ここを作った人がいて、ここを管理する人がいて、色々な人のお陰で今日君たちは野球が出来るんだよ。グラウンド挨拶をする時は必ずそういう人達のことを思い浮かべて、お願いしますを言いなさい。帰るときはまたそういう人達のことを思い描きながら今日元気に野球出来たことに感謝してありがとうございますを言いなさい」私はそう指導されて中学時代を過ごした。だから私もいま東京和泉シニアに在団する選手達に時々この話をしている。毎年入団してくる選手達は工藤さんがどういう人か知らないし、そういう人のお陰で今日坂東グラウンドに立てるのだということを伝えるのは私の仕事だと思うからだ。

 

 この度の日曜日は、年内最後の坂東練習ということで(来週以降は卒団式やOB戦ということでグラウンドを別場所で予定している)、練習を午前中で終え午後からは大掃除とした。グラウンド内の倉庫の整理、チーム道具車の掃除と道具整理、チームバス掃除、防球ネット補修、ボール仕分け、そしてグラウンド整備である。盛り上がった1塁ベース付近は井上コーチ中心に平らにしてくれた。1塁側ファールグラウンドの芝生の境目を綺麗に真っ直ぐにしてくれたのは工藤コーチ。ブルペンは主に投手陣。フィールド内のレイキがけとトンボ押し引きはその他の選手達で東西両方向から行った。トンボ押し引きとブラシまわりは私も率先して「1年間ありがとう、来年もよろしく」そう心の中でつぶやきながら気持ちを込めて行った。

 

 朝、特にライト側はグラウンド内に落ち葉が無数に散らばっていて、若林父が一生懸命に掃除してくださった。午前中にお話しする時間を頂いたが、「監督がグラウンドを大事にされているのは見ていますので、私でもやれることはやらせてください」と言って下さって、心の底から嬉しかった。やっぱり見ててくれている人は必ずいるのだ。見返りを求める活動でないことは分かっているが、やはりそういう言葉を頂けるとたまらなく嬉しくなる。工藤さんをはじめ、選手やチームスタッフのみならず、お父さんやお母さん方もグラウンドにたっぷりの愛情を注いでくれた。沢山の人達のお陰で今年も1年坂東グラウンドが綺麗に保たれていた。本当にありがとうございました。

 

 そして坂東グラウンド様。今年1年ありがとうございました。また来年も宜しくお願い致します。

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