1 | 2 | 3 | 4 | TOTAL | |
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東京神宮シニア | 5 | 3 | 0 | 8 | 16 |
東京和泉リトルシニア | 2 | 0 | 0 | 0 | 2 |
公式戦は結果が全て。3週続けて同じ書き出しだが、つまり「負け」という結果が全てである。目標としていた関東大会出場は夢と消えた。悔しいのは秋の大会に負けた後に課題としていたことを未だに克服出来ずに敗れてしまったことである。本気で目標を達成しようとする「心の温度」を上げられなかったことが悔しくて仕方がない。
試合を振り返る。初回、先頭打者のファーストゴロの際にピッチャーのベースカバーが遅れて内野安打としてしまい、2番のライトフライをライトが打球を見失ってテキサスヒットとしてしまう。さらに3番のセカンドゴロをエラーしてこれで無死満塁。4番、5番に連続押し出し四球を与えて2失点。これまで相手打線は何もしていない。こちらが勝手にミスをして2点プレゼントしてしまったようなものだ。6番のショートライナーでセカンドランナーが飛び出して併殺打となったが、7番にセンターオーバー、8番にライトオーバーを打たれて追加点を与え初回で5失点した。これで勝負あった。
江戸川中央戦の後もここに書いたが、相手が格上の場合は「あれ、ちょっとやばいかも…」と思わせるようなゲーム展開に持ち込まない限り勝ち目はない。そういった意味で「最初の3回をいかに守ってゲームをつくるか」ということが何よりも大事で、その中でも特に初回の守りが勝敗を左右する。だからこそ水曜日練習の時と、前日の土曜日の夕方と、そして朝のミーティングと3度に渡り「初回を死に物狂いで守れ。その為の準備をしっかりして試合に臨もう」と選手達に話したが、とてもとてもそういった覚悟での試合の入りではなかった。ルーティンとなっているアップ前の円陣、そしてアップ、キャッチボール、トスバッティング、シートノックと徐々に試合が近づいて来ても少しも気合いがノッて来ない。見兼ねて主将を呼んで「全然気合入ってないぞ。お前もそう感じないか?」と聞くと「はい。感じます」と言う。「このままじゃ初回でゲームを決められてしまうぞ。選手集めて気合いを入れ直せ」と話したが、こんなことを試合前に監督に言われている時点でもうとてもじゃないが東京神宮シニアには勝てない。何故なのか不思議でならない。ここで勝利すれば目標としていた関東大会出場がグッと近づき、同時に「全国屈指の強豪チームに勝利した」という勲章も手に入れることが出来る。何よりもそういう強いチームに挑戦することほど面白いことはない。ワクワクが止まらなくなるようなシチュエーションであり試合である筈なのに、「心ここにあらず」といった雰囲気の試合になってしまうのは何故だろう。毎日手を痛めながらバットを振り、毎日苦しい思いをして走って、トレーニングして、色々な人の協力によって自らの野球が成り立ち、たくさんの時間を野球に費やしてきてこの試合を迎えている筈なのに、だからこそ「誰にも負けたくない」という気持ちにはならないのだろうか。そういう気持ちにさせてあげられていないのは私の責任だと思うしかないし、勝負にタラレバを言ってはいけないことも分かっているつもりだが、しかしもし本当に初回に気持ちを最高潮に高めて死に物狂いで守り抜き、無失点で切り抜けられていたら、裏の攻撃で東京神宮の内野陣がエラーを連発して2得点出来たことを考えると、全く違うゲーム展開になっていたのは間違いないだろう。「現新3年生はそれが出来る能力を持った選手達である」と思えるからこそ、余計に歯痒くて仕方がない。事実、本来であればファーストゴロ、ライトフライ、セカンドゴロで三者凡退で終わっている筈なのだ。何一つとして処理の難しい打球など無かった。足りなかったのは「勝とうとする強い気持ち」と、それによってなされる筈の「最高の準備」だ。
今の我が東京和泉シニアの選手達は純粋で良い子達ばかりである。決して野球に対していい加減に取り組んでいるとは思わないし、一生懸命やってくれているのは確かだ。そして現新3年生は誰1人として途中退部をしていない。これは簡単なことのようでとても立派なことだ。それもあってチームメイト同志の仲も良いようだし、練習の雰囲気も決して悪くない。しかし何故か勝利に対して今一つ貪欲になれないというか、向上心が弱いというか、「どこか冷めている」という感覚がどうしても拭い去れない。それは現新3年生が1年生大会初戦で杉並シニアに勝利した時から感じている、コーチを含めた我々指導者陣の共通認識である。今春の大会は計4試合戦ったが、選手達が心の底から本気で戦えていると感じた試合は残念ながら1試合も無かった。一生懸命やっていないわけではないだろうから、そう私が選手達に話したとしてもピンと来ないのかも知れないが、もっともっと心のエネルギーは高められる。私の感覚からすれば「本気」とはまだ程遠い。
例えば東京和泉シニアが唯一全国大会に出場した時の学年なんて、やんちゃ坊主の悪ガキばかりで学校や遠征先などで悪さばっかりするので、その後始末に大人達皆で手を焼いていた。しかしこと野球となると「絶対に負けたくない」という思いに溢れていた。ミスすることを恥ずかしがり、負けることを酷く嫌った。勝ちに対して貪欲だったし「もっと上手くなりたい」という向上心が強かった。練習は適当にやっている時もあったが、試合となれば、特に公式戦の時は目の色を変えて戦っていた。その学年で「ハートの無い試合」と感じたのは最後の「東京中日スポーツ杯」くらいだったのではないか。「消化不良」といったようなゲームはそれまで1試合も無かったように思う。そしてそれが普通だと思うのである。
今、WBCが盛り上がりを見せている。侍ジャパンの2次ラウンド初戦となったオランダ戦はまさに死闘となった。両軍の選手達の熱い思いが球場全体を支配していた。それがブラウン管を通しても伝わってきて、テレビで見ているだけなのに心臓が口から飛び出そうだった。菊池の超ファインプレーや、中田のホームランや決勝打、千賀の好投など次の日の報道で色々なシーンがクローズアップされていたが、私の中のこの試合最大のハイライトは8回一死満塁でマウンドに上がり、2人の打者を抑えて絶体絶命のピンチを切り抜けた増井のピッチングだ。日の丸を背負い、1点も許されない状況で、しかも満塁の場面であの強力オランダ打線を相手にする。想像を絶するプレッシャーだったに違いない。しかし良い表情をしていた。マイナスイメージを全く持っていない表情だった。ただ闘志を燃やして魂込めて打者に向かっていた。投手出身の私からすると、とてつもなく凄い男だと思った。そして2人目の打者を渾身のストレートでショートゴロに仕留めると、両手でガッツポーズをして雄叫びをあげた。ベンチもスタンドも総立ちだ。ベンチに戻った増井は宮西と抱き合っていた。涙が出そうになった。試合後、胸が熱くなってバットを振りたくなった。時計は12時を回っていたが、きっと私と同じ思いに駆られてバットを振った野球人が何人もいたことだろう。勝利監督インタビューで小久保監督がお立ち台で答えを言っていた。「執念だけです」と。やはり「気持ち」なのだ。あの日本代表の選手達が技術ではなく「気持ち」で戦っているのに、どうして中学生がそれを疎かに出来るだろう。正直、中学野球なんて「気持ち」さえあれば何とでもなる。しかし今のチームにはその一番大事な「気持ち」が足りない。むしろ野球の能力は持っている。夏の大会まであと10週間である。それまでにチームの「心の温度」をどこまで上げさせることが出来るのであろうか。