1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | TOTAL | |
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東京和泉リトルシニア | 0 | 2 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 3 |
羽村シニア | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
西東京の強豪チームである羽村シニアさんと2試合オープン戦を戦って、2試合とも負けなかったという点は1つ自信にして良いと思う。しかしまだまだモチベーションを上げて試合に入っていくことが出来ない。監督やコーチにケツを叩かれないと戦闘モードに入っていけない。それではまだ「戦わされている」に過ぎない。目標を定めてそれを達成する為に、チーム力を高める為にオープン戦を行っているのだ。秋の大会初戦までもう一ヶ月を切っている。そろそろ監督・コーチの力を借りずとも自分達で心を燃やすという作業が出来るようにならないといけない。
今週は冒頭に「負けなかった」と書いた。それは2試合で2失点しかしなかったということが大きい。日本のアマチュア野球は大学のリーグ戦を除くとトーナメント方式の大会がほとんどである。つまり「負けることが許されない明日無き戦い」なのである。だから「負けないチーム」が勝ち上がっていく。「負けないチーム」とは色々な要素があるがまず失点しないことが基本ベースである。0点に抑え続けていれば負けることはないからである。野球の試合で失点する時というのは、必ずと言っていいほど四死球か失策が絡む時だ。第1試合の四死球と失策は0、よって失点も0である。これはとても評価出来ることである。まず1つ上の学年の打線相手に四死球を1つも出さなかった1年生投手2人に「あっぱれ」である。まだまだボールに力も無いし投手として不足している要素は沢山あるのでこの程度で満足してもらっては困るが、「気持ちを込めてストライクゾーンに投げ込む」という投手として一番大切なことが出来ていることに関しては評価してあげたい。ストライク先行でどんどん打たせていくから守りのリズムが良く、良いプレーも生まれて失策も出ない。常々選手達に話してはいるが、打撃は良い打者で3割。10回打席に立って7回は凡退するのだ。気持ちを込めてストライクを投げてさえすれば大抵は凡打になる。そしてそれを野手が確実に処理すればアウトを重ねていけるのだ。3アウト×7イニング=21個のアウトをいかにしてとるかということは、トーナメントを勝ち抜いていく上で非常に重要な要素である。特にこの試合のサードの守りは大きかった。貴重な先制2点適時打を放ったのもサードの選手だ。なかなか中学生でサードを守りきれる選手というのは少ない。「速い打球に対応出来るフットワークと勇気」「バント処理に対応できる足」「ファーストまで投げきれる肩」。これらを持ち合わせているサードは中学生では少ないということだ。彼にも後ろの2つの要素は不足している。これからも努力を重ね、それぞれレベルアップして良いサードになってほしい。
2試合目は初回に2失点した。その時は3つの失策が出てしまっている。やはり失策が絡むと失点してしまう。2試合目に先発した2年生投手も先週の投球からは修正されていて、投げているボール自体はとても良かった。ただ、失策をされて失点した場面を野手のせいにはして欲しくない。野手のミスを全て背負ってでも抑えきるのがエースだからである。そういう本当のエースになる為には「ここぞの場面」で後悔しない毎日を過ごしていないといけない。この日投げた3人の投手は皆エースになれる力を持っていると思うが、そういった部分で如何に早く気付いて心の部分で成長して1つ大人になれるかということが課せられている課題であろう。それを克服したスーパーエースが我がチームに現れた時、今の選手達のチーム目標は達成されるのだと思う。
さて、先週私の心を大きく揺れ動かされた出来事があったのでそれをここに記しておきたい。先日、都市対抗野球の決勝戦を東京ドームに観に行った。我が東京和泉シニアのOBが2人、その名誉ある舞台に立つことになったからである。1人は日本通運の正捕手である木南了。もう1人は大会の新人王に当たる若獅子賞を獲得したNTT東日本の投手堀誠である。これがどれだけ凄いことか。来週から高校野球の夏の甲子園大会が開催されるが、その決勝戦とは訳が違う。同じシニアの卒業生から甲子園に同時に出場することは、強い名門のシニアならよくある事かも知れない。しかし都市対抗出場はなかなかない。まして決勝戦に同時に2人は奇跡に近い。それが現実になると分かっただけでいてもたってもいられず東京ドームに足を運んだのだった。
まず木南の中学時代を振り返ってみる。彼は東京和泉シニアが唯一全国大会に出場した年の正捕手だった選手である。彼は中学1年生の頃、最初は軟式野球をやっていた。しかし軟式野球では物足りず、「硬式をやりたい」と言って秋頃入団してきた。来た時は足が遅く、肩が弱く、打球も外野まで飛ばない。少なくともその時は何も持たない選手だと思った。「そのまま軟式やっておけば良かったのに」と思ってしまうほどだった。しかし彼はその自分の至らなさを認めてコツコツ努力を重ねることの出来る才能を持っていた。自分がチームに貢献出来るようになる為にはどうしたら良いか、今何が自分に足りないのか、それを補うには今何をすれば良いのか、それを自ら考えられる選手だった。メキメキと力をつけた彼は3年生の夏の大会2回戦で決勝ホームランを放った。「あの外野まで打球が飛ばなかった選手がホームランを打つようになったのか」と感動して鳥肌が立ったことを今でも覚えている。その頃には何校か高校から「うちに来てくれ」とスカウトされるようになっていた。千葉経済大付属に進学し、帝京大学を経て日本通運に入社した。そして2017年7月24日。アマチュア野球界の頂点を決める戦いのホームベースの後ろにマスクを被って座っていた。その姿を見ただけで涙が出そうになった。つまり誰にでも可能性があるということだ。あの身体能力の欠片も無かった木南が今や社会人日本代表候補となっているのだから。ただもしかしたら、木南は「考える能力」という点では東京和泉シニア史上最高の選手だったかも知れない。2017年の都市対抗野球大会はNTT東日本が36年ぶりの優勝を飾り幕を閉じた。家に帰ってから木南にラインをした。「お疲れ様。決勝戦は残念だったけど準優勝おめでとう」と。するとこんな返信が返ってきた。「今日負けたら意味がなかったんです。色々な悔いが残っていますがこれを生かさなければならないので、次は優勝してちゃんと勝てる捕手になれるように頑張ります。自分自身もまだまだ力不足なのでもっとレベルアップします」…。意識の高い木南らしい言葉だなぁ~と思った。アマチュア野球界の頂点を決める戦いの舞台に立っても何も満足していない。まだまだ上を見ている。そして失敗を糧にしようとしている。このあくなき向上心が木南了という男をあのレベルの高い舞台まで押し上げている。
堀誠の中学時代も振り返ってみる。彼は中学2年の秋頃、「肘が痛くてもう野球を辞めるか」と考えてしまう程追い込まれていた時期があった。そこで会長と私が池袋のワールドウィングというジムを勧めた。そこに通うようになって肘痛が改善され思い切って投げられるようになった。高校進学に向けての面談を行った際、「行きたい学校はどこか」と尋ねると、「日本航空高校に行きたいです」と言ってきた。志望理由は「初動負荷トレーニングを取り入れているからです。自分の肘痛が改善されたのはこのトレーニングのお陰なので高校でも続けていきたいんです」という事だった。彼は自分のパフォーマンスを伸ばしていく為にはこのトレーニングが必要だと考え、それを取り入れている学校はないかと全国から探し出してきたのである。後にも先にもこのような志望理由で、しかも都外の学校を志望してきたのは彼だけである。目標が明確になっていたし、多少なりとも近い将来のビジョンが描けているように感じた。私の専修大学時代の後輩に日本航空高校OBがいたので、彼に頼んで堀誠を進学させてもらうことになった。日本航空高校への進学が決まったのは8月頃だったと思うが、その後の彼の成長は目覚しいものであった。目標が明確になっているから取り組む姿勢も他の選手と全然違った。監督やコーチに言われるでもなく初動負荷トレーニングの本部である鳥取までわざわざ合宿にも行き、自らを高めようとすることに貪欲だった。高校の練習に参加し始める3月までの半年強の間で身長も伸びて身体も大きくなり、投げるボールは超中学級になっていった。卒団式での彼の姿は妙に大人びて見えた。
2人に共通しているのはやはり「考える能力」に優れていること。決して身体能力が高かった訳でも、特別野球センスに優れていた訳でもない。しかし目標が明確になっていてそれを達成する為に努力を惜しまなかった。自分に今何が足りないのか、それを補う為に今何をすれば良いのか、ではそれを実行する為にはどのようなライフサイクルで毎日を過ごせば良いのか、それらを自分で考えることが出来て、そしてそこに妥協せずに実践できる心の強さがあった。しかし彼らを見ているとそこに苦しさや悲壮感みたいなものを感じなかった。きつい練習さえもむしろ自らを高められると楽しんでやっているようにも見えた。そう、きっと楽しいのだと思う。人に言われてやらされているのではなく、自分で目標を定めてそれを達成しようと自らすすんで取り組んでいるから楽しいのだ。東京和泉シニアも20年目の活動を迎え、このような素晴らしいOBを排出している。現役の中学生も立派な先輩を見習って、将来あの舞台に、さらにはプロ野球やメジャーリーグといったもっと上の舞台に立てるように、夢を大きく持って頑張って欲しいと思う。