1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | TOTAL | |
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東京和泉リトルシニア | 0 | 0 | 0 | 0 | 7 | 1 | 8 |
ふじみ野シニア | 0 | 1 | 3 | 0 | 1 | 0 | 5 |
いつ以来だろう。試合後に「打って勝った」と思えるようなゲームに出会えたのは。
ダブルヘッダーとなったこの日2試合目。予選トーナメントの1回戦同様、1年生エースを先発投手としてマウンドに上げた。初戦よりは全然状態も良く、2回1失点と上々の立ち上がりを見せた。しかしこの1年生エースと近い将来ダブルエースとなることを期待しているもう1人の1年生投手が乱調だった。3回から「2イニング限定で」という思いでマウンドに上げたが、ストライクが入らず四球でランナーを溜めてタイムリーを打たれるという最悪な内容だった。やはり初めての公式戦ということで緊張感もあったろう。オープン戦を通じて打たれることはあっても四死球で自滅するということは無かったので、そこを信頼してマウンドに送り出したのだがいつものストライク先行のリズムの良い攻めのピッチングは影を潜め、どこか余所行きのピッチングとなってしまった。3回の1イニングだけで3失点し、0対4とされてしまった。ふじみ野シニアさんは1回戦を5回コールドゲームで勝利しエースと正捕手を温存出来ていた為、序盤で4点のリードを奪われたのはかなり苦しい展開となった。しかしここから猛攻で試合を引っ繰り返した。
5回、無死2、3塁のチャンスをつくり、9番の前進守備の間を抜けるラッキーなタイムリーヒットで1ー4。1番が四球を選んで無死満塁から2番の2点タイムリーで3-4。3番に送りバントで1死2・3塁から4番が敬遠気味の四球で歩かされ1死満塁で5番打者を迎えた。5番打者は現在の正捕手であるが、実は昨年膝の手術をしていてまだ状態が万全ではない。この日2試合目となったこの試合では膝への負担を考慮し前の回にもう交代を命じようとした。しかし本人が「まだ行けます」と言うので「ではもう1イニングだけ」という限定で守備につかせることにした。でも私の心の中では後悔していた。4回表の攻撃時に打席を終えた後の守りだったので、「次の打席が回ってくるまであと2イニングはかかる。守備での膝の負担を考えて交代しようとしているのに、打席がまわって来ないならもうここで代えるべきだったではないか。この回の守りまで引っ張ることには何の意味も無いではないか」と自分に腹を立てていた。選手は誰でも「行けます」と言う。その気持ちを抑えつけてでも選手の将来を守ってあげなければならないのが私の義務でもある。「それが出来ていないじゃないか」と後悔していたのである。しかしまさかの5回表の猛攻で4回裏の守りを挟んだものの、1イニングで一巡してあっという間にもう1度打席が回ってきてしまったのである。ネクストバッターズサークルにいた彼に声をかけた。「この打席が今日のお前の最後の仕事だ」と。彼の出した答えはなんと3-4から7-4にする逆転のグランドスラム。おそらく変化球を狙ったのだろう。左打者には外角に逃げていくチェンジアップを得意とする投手だった。前の打席にタイミングを外され打たされてしまった反省を生かしたのだと思う。初球のストライクをとりにきた変化球を迷い無く振り抜き、右中間スタンドにぶち込んだ。ここ最近取り組んできた「後ろ小さく前を大きく」というスイングが自然に出来ていた。「変化球を狙い打った」という打席での狙い球の絞り方といった準備の部分においても完璧な一打だった。もしあの時交代させていたら、あの打席に立つことになったのは1年生捕手であった。もう奇跡としか言いようがない。野球の神様が「このチームはここで負けてはいけない。勝って決勝リーグへ進みもう1つ2つ経験を積みなさい」と、東京和泉シニアを選んでくれたのだ。そしてその勝利の女神に微笑まれるムードをつくったのはベンチと応援席の声だ。あの回からのベンチのエネルギーは凄かった。あのムードをつくることが出来れば勝利を呼び込めるのだと皆に分かってほしい。あの時はオープン戦時からずっと言ってきたランナーとの確認も、皆必死に伝えようと思いを込めて声を出していた。それが届くからランナーも塁上で手を上げて応えていた。あれがチーム全体で勝とうとする姿である。確かに5番打者の満塁ホームランは素晴らしい。14年シニアの野球に携わってきて目にしたのは3本目である。しかしそれを打たせたのは間違いなくチームの力だ。選手達の思いの強さだ。その大切さをこの試合で皆に学んでほしい。
もう1つこの試合で忘れてはならないのは6回表に得点したダメ押しの1点である。9番が四球で出塁し、初球に盗塁。1番が送りバントで1死3塁とし、2番のスクイズでノーヒットで得点した。これは貴重な追加点であった。相手の反撃する意欲を失せさせ、勝利を確実なモノにする効果的な得点であった。最終回の守りで2年生投手がスタミナ切れでコントロールを乱したことを考えると、3点差で迎えられたことはやはりとても大きかった。実はオープン戦を通じて「もう1点」が取り切れていない試合が続いていた。川越シニア戦も含めてダメ押しの1点を公式戦で得点して試合を決められたことは、秋に向けてチームとして自信にして良い1つの要素だと思う。